オドリアカソ

トパアズいろの香気が立つ


そんなにもあなたはレモンを待つてゐた

かなしく白いあかるい死の床で

私の手からとつた一つのレモンを

あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ

トパアズいろの香気が立つ

その数滴の天のものなるレモンの汁は

ぱつとあなたの意識を正常にした

あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ

わたしの手を握るあなたの力の健康さよ

あなたの咽喉に嵐はあるが

かういふ命の瀬戸ぎはに

智恵子はもとの智恵子となり

生涯の愛を一瞬にかたむけた

それからひと時

昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして

あなたの機関ははそれなり止まつた

写真の前に挿した桜の花かげに

すずしく光つレモンを今日も置かう


    『レモン哀歌 高村光太郎』




昔は教科書に載っていました
今はどうなんだろう


大好きになり、
人に渡しを繰り返し、
何度購入したことでしょう




また
手にとり
繰り返し
読みたくなりました


いつの日か
描ける値の
人間に


なりたいものです
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by odori-akasou | 2008-06-19 21:25